レクサス(LEXUS)は1989年に北米で誕生した日本発のプレミアム自動車ブランドです。「壊れない・静かで快適・高品質」という日本の製造技術を高級車市場に持ち込み、ベンツ・BMW・アウディが席巻してきた高級車市場に風穴を開けました。この記事では2026年7月時点の最新情報をもとに、レクサスの歴史・車種・技術・デザイン・モータースポーツ・チューニングまで詳しく解説します。
レクサスの歴史
誕生の背景(1980年代〜1989年)
レクサスの歴史は1989年に北米でスタートしました。当時、北米市場でトヨタは製造品質と信頼性の高さで多くのユーザーの支持を集めていたものの、小型車中心で「安価だが信頼性の高いクルマ」というブランドイメージがありました。そのため、より利益の見込める大型車・高級車を北米市場に投入したくても、トヨタブランドでは成功が難しいという事情を抱えていました。そこでトヨタは北米で新しいプレミアムブランドを立ち上げることを決意し、1980年代前半から入念な準備を始めました。クルマの開発だけに留まらず、北海道にテストコースを作るほど徹底したものでした。
1989年に登場したレクサスブランド初の車は初代LS(日本名:セルシオ)です。静粛性・乗り心地・品質でメルセデス・ベンツSクラスと真っ向から勝負し、発売直後から高い評価を獲得。「日本車はプレミアムになれない」という常識を覆し、北米高級車市場での地位を確立しました。
RXによるラグジュアリーSUVの開拓(1998年〜)
レクサスRXは1998年に北米でラグジュアリークロスオーバーSUVのパイオニアとして誕生しました。
それまで高級車といえばセダンが主流でしたが、RXは「上質な乗り心地と実用的なSUVボディ」を組み合わせた新しいカテゴリを切り拓き、空前の大ヒットとなりました。2005年には「RX400h」を発売し、ラグジュアリーセグメント初となるハイブリッドモデルを導入するなど、ラグジュアリー市場における電動化の先駆者として注目されました。
日本市場への上陸(2005年)
2005年にレクサスが日本市場で正式に展開を開始しました。それまで日本では「セルシオ」「アリスト」「ハリアー」などとして販売されていた車種がレクサスブランドに統合されました。日本市場への参入にあたり、全国のレクサス専売ディーラーを整備し、従来のトヨタ販売網とは完全に分離した高品位な接客・サービス体制を構築したことが特徴です。
スピンドルグリル採用とデザイン革命(2012年〜)
2012年にGS(4代目)でスピンドルグリルを採用してから、レクサスのデザインは一変しました。中央がくびれた紡錘形(スピンドル)のグリルは賛否を巻き起こしましたが、他ブランドとの差別化に成功し、「レクサス顔」として世界に認知されるデザインアイコンになりました。その後、スピンドルグリルは全モデルに展開され、2022年以降の新世代モデルではグリルとボディが一体化した「スピンドルボディ」へとさらに進化しています。
電動化とBEV専用モデルの登場(2021年〜)
2021年以降、レクサスはBEV専用モデル「RZ」の発売・NXへのPHEV(NX450h+)設定など電動化を本格加速させています。「Lexus Electrified」と名付けた電動化ビジョンのもと、電動化技術を用いた基本性能の大幅な進化を実現するとともに、クルマがもたらす楽しさ・喜びを提供し続けることを目指しています。
現行車種ラインナップ(2026年7月時点)
コンパクト・エントリー
| 車種 | カテゴリ | 特徴 |
|---|---|---|
| LBX | コンパクトプレミアムSUV | 2023年12月発売。レクサス最小モデル。GA-Bプラットフォーム採用。「クラスレスコンパクト」を標榜。発売以来高い人気を維持。2026年5月にLBX MORIZO RRが一部改良(680〜756万円) |
| UX | コンパクトSUV | HV・BEV(UX300e)設定。コンパクトサイズながらレクサスの質感を備える |
ミドルSUV
| 車種 | カテゴリ | 特徴 |
|---|---|---|
| NX | ミドルSUV | 価格.comの2026年7月22日週間ランキング1位。2021年フルモデルチェンジ。NX250・NX350・NX350h・NX450h+の4ライン。レクサス初のPHEV設定。2026年末にビッグマイナーチェンジ予定(Arene OS・スピンドルボディ採用見込み) |
| RX | ミドルSUV | 同ランキング2位。ラグジュアリークロスオーバーSUVのパイオニア。2022年フルモデルチェンジ。DIRECT4搭載。2026年12月マイナーチェンジ予定 |
ラージSUV
| 車種 | カテゴリ | 特徴 |
|---|---|---|
| GX | ラージSUV | 本格オフロード性能を持つラダーフレームSUV。北米向け主力モデル |
| LX | フラッグシップSUV | ランドクルーザー300ベースのラグジュアリーSUV。圧倒的な走破性と豪華な内装を両立 |
セダン・クーペ
| 車種 | カテゴリ | 特徴 |
|---|---|---|
| IS | スポーツセダン | 2013年発売の3代目が継続。F SPORT設定あり。2026年にISマイナーチェンジ実施予定。コンパクトスポーツセダンとして根強いファンに支持される |
| ES | ラグジュアリーセダン | 2026年春に新型ES発売。FFベースの上質なセダン。静粛性の高さが際立つ |
| LS | フラッグシップセダン | レクサスの頂点に立つラグジュアリーセダン。マルチステージハイブリッド搭載。VIPユースまで対応 |
| RC(RC F含む) | スポーツクーペ | 2ドアクーペ。RC Fは5.0L V8NAの473ps。スポーティなスタイリングと走行性能を両立 |
| LC | フラッグシップスポーツクーペ | マルチステージハイブリッドまたはV8自然吸気。走行性能と美しいデザインで高い評価を受けるレクサスのアイコン |
BEV(電気自動車)
| 車種 | カテゴリ | 特徴 |
|---|---|---|
| RZ | BEV SUV | レクサス初のBEV専用モデル。DIRECT4・ステアバイワイヤ搭載。2026年3月時点でBEVとして全モデル中最も納期が長い(8ヶ月以上)ほどの人気。RZ550e F SPORT追加設定 |
売れ筋・人気車種(2026年7月時点)
価格.comの2026年7月22日集計の人気ランキングでは1位NX・2位RX・3位LBX・4位IS・5位UXの順となっています。NXとRXはともに「ちょうど良いサイズ感・豊富なパワートレイン・高い完成度」で常に上位をキープしています。LBXは2023年の発売以来高い人気を維持しており、「コンパクトなのに本格レクサスの質感」という評価が支持を集めています。
一方でRZはBEVということもあり関心層が急増しており、納期が8ヶ月以上になるほど受注が集中するケースも見られます。
独自技術の解説
スピンドルグリル・スピンドルボディ
2012年にGSで初採用されたスピンドルグリルはレクサスのデザインアイコンです。紡錘形(スピンドル)の枠組みが正面から見て大きくくびれた独特の形状で、ひと目でレクサスとわかる個性を確立しました。2022年以降の新世代モデル(RX・RZ・LX等)では進化型の「スピンドルボディ」を採用しており、グリルとボディパネルをシームレスに融合させ、塊感のあるフロントマスクを実現しています。
DIRECT4(ダイレクトフォー)
DIRECT4は前後にeアクスルを持つAWDシステムで、eアクスルはモーター・インバーター・減速ギヤ・デフなどを一体化したユニットです。前後の駆動力配分をモーターで瞬時かつ精密に制御することで、従来の機械式4WDでは実現できなかった高度な運動性能を可能にします。またDIRECT4と合わせて前後独立油圧制御式ABSを採用し、前後の回生ブレーキとの効率的な協調制御も実現しています。
ステアバイワイヤ(One Motion Grip)
RZに採用されたステアバイワイヤは、ステアリングホイールとタイヤをケーブルや機械的なシャフトで直接つながず、電気信号でステアリング操作をタイヤに伝える革新的なシステムです。ステアリング比をコンピューターで自在に変えられるため、低速での切り返しが少なく・高速では安定した操舵特性を実現します。またステアリングホイールを90度以内の切り角でフル操舵できる「ヨークハンドル」と組み合わせることも可能です。
マルチステージハイブリッド
LS・LCに搭載される高度なハイブリッドシステムです。通常の2段ギヤに相当する変速機構をTHSに追加することで、エンジンの力強さとモーターの応答性を高い次元で融合します。低速域ではモーターの豊かなトルクで滑らかに、高速域ではエンジンの出力が最大限に活きる特性を実現しており、LSの600h+はこのシステムで最高出力359ps・最大トルク700N・mを誇ります。
Lexus Safety System+(LSS+)
レクサスの予防安全技術パッケージです。プリクラッシュセーフティ・レーダークルーズコントロール・レーンディパーチャーアラート・オートマチックハイビームに加え、レーントレーシングアシスト・交差点での出会い頭衝突検知など年々機能を拡充しています。現在は全モデルに標準装備されています。
Lexus Cockpit(レクサスコックピット)
人間中心の設計思想に基づいたドライバー環境です。大型ディスプレイ(RZ・LX・GXは12.3インチ)・直感的なタッチ操作・ヘッドアップディスプレイ・パノラミックビューモニターなどを統合。2026年にNXへの大型ディスプレイ導入が予定されており、全モデルへの展開が進んでいます。
グレード体系
| グレード | 位置づけ | 特徴 |
|---|---|---|
| 標準グレード(Version L・ELEGANT等) | ベースグレード | 必要十分な装備を備えたエントリーモデル。それでも他ブランドの上位グレードに匹敵する装備 |
| F SPORT | スポーツグレード | スポーツチューンのサスペンション・専用エアロ・専用内装。ドライビング性能を重視するモデル。多くの車種に設定 |
| F SPORT Performance | 高性能スポーツグレード | F SPORTの上位版。走行性能をさらに強化した設定 |
| version L | ラグジュアリーグレード | 本革シート・マークレビンソン・パノラミックビュー等が充実。乗り心地・快適性を重視 |
| Bespoke Build | 個別カスタマイズ | インテリアカラー・素材・縫製パターンを選択できるカスタムオーダープログラム。LBXで設定。納期は最長6〜12ヶ月 |
| F(RC F・LC等) | 最高性能グレード | FはMotorsport(モータースポーツ)の頭文字。RC FはV8NA・473psを発揮するフラッグシップスポーツ |
| MORIZO RR | 超高性能スポーツグレード | LBXに設定。MORIZO(豊田章男会長のドライバー名)が監修した高性能グレード。2026年5月一部改良 |
| OVERTRAIL | オフロード志向グレード | NX・RXに設定。オフロード走行を重視したグレード。専用サスペンション・アンダーカバーを装備 |
モータースポーツ活動(2026年時点)
WEC(FIA世界耐久選手権)LMGT3クラス
WECのLMGT3クラスにレクサスRC F GT3でアコーディスASPチームが2台体制で参戦しています。2026年シーズンは新たなカラーリングをまとった78号車・87号車でGTクラスの世界タイトルを目指しています。レクサスRC F GT3はRC Fをベースに2016〜2017年頃から開発されたマシンで、自然吸気5.4L V8エンジンをフロントに搭載し、WECグリッドの中で最も歴史のあるGT3マシンの一つです。
なお2025年はRC Fモデルの競技活動最終年とも見られており、後継となる新型レクサスGT3マシンの登場が期待されています。
SUPER GT
国内ではSUPER GT GT500クラスにLexus LC500でTGR TEAM KeePer TOM'S・au TOM'S Racing等が参戦しています。GT300クラスにもRC F GT3が投入されており、国内外でレクサスのスポーツイメージを発信しています。
チューニング・アフターパーツ
レクサスの純正スポーツパーツ・TRD
TRD(Toyota Racing Development)はトヨタ・レクサスの公式スポーツパーツブランドとしてレクサス車向けのアフターパーツも展開しています。エアロパーツ・マフラー・サスペンション・ブレーキパーツなどがラインナップされており、IS・RC・LC・NX等向けが充実しています。
主なアフターマーケットパーツメーカー
| メーカー | 得意分野 | 主な製品 |
|---|---|---|
| WALD(ヴァルド) | エアロ・ドレスアップ | LS・LX・RX向けの高品位エアロキット・アルミホイール。海外セレブにも人気 |
| ROWEN(ロウェン) | エアロスタイリング | RC F・LC・NX等向けのエアロパーツ。MANSORY系の欧州ライクなスタイリングも展開 |
| HKS | エンジン・マフラー | RC F(2UR-GSE)向けのマフラー・ECUチューニング |
| TOMS(トムス) | 総合チューニング | レクサス・トヨタの公認チューナー。IS・RC F・LCの足回り・エアロ・エンジン系チューニング |
| ARTISAN SPIRITS | エアロ・ドレスアップ | LS・LX・RX等向けの完成度の高いエアロキット。特にLSのコンプリートカーが高い評価 |
チューニングの傾向
レクサスのチューニングはエアロ・ドレスアップが中心で、エンジンへの大幅な手を加えるケースは国産スポーツカーほど多くありません。ただしRC FはV8自然吸気エンジンのポテンシャルを活かした吸排気チューニング・足回り改善が定番で、サーキット走行を楽しむユーザー層も存在します。LSはVIPカー文化との親和性が高く、「エアロ・ホイール・車高落とし」の王道VIPスタイルのベース車としても長年人気があります。
生産拠点
| 拠点 | 主な生産車種 |
|---|---|
| 元町工場(愛知県豊田市) | LS・LC・GS(生産終了) |
| 田原工場(愛知県田原市) | LX・NX・RX |
| 明知工場(愛知県みよし市) | RZ・NX450h+(PHEV) |
| 九州工場(福岡県宮若市) | IS・RC・UX・ES(一部) |
| カナダ工場(オンタリオ州) | RX(北米向け中心) |
主要販売市場
| 市場 | 状況 | 主力車種 |
|---|---|---|
| 北米(米国) | 最大市場。SUV需要が旺盛でRX・NX・GX・LXが好調。LSの販売はセダン市場縮小に伴い減少傾向 | RX・NX・GX・LX |
| 日本 | 国内プレミアムブランドとして安定した地位。NX・RX・LBXが人気。Bespoke Buildで個性化需要も開拓 | NX・RX・LBX・IS |
| 欧州 | HV中心の展開がEV規制の強化局面で相対的に有利。NX・RX・UXが主力 | NX・RX・UX |
| 中国 | 地場EVメーカーとの競争で苦戦。BEVラインナップの拡充が急務 | NX・ES・RX |
| 中東 | LX・GXの本格SUVが高い人気。高級車需要が旺盛な市場 | LX・GX・LS |
レクサスの評判・口コミ傾向
高く評価されているポイント
- 静粛性・乗り心地の高さ:LS・ESに代表される静粛性の高さは「別次元」と評するオーナーが多い。路面からの振動・風切り音の遮断が徹底しており、長距離移動での疲労感が少ない
- ディーラーのサービス品質:専売ディーラーが徹底した接客教育を受けており、「お金を払って気分よく買い物できる」体験として評価が高い
- リセールバリューの高さ:IS・RX・NX等は中古車相場が安定しており、プレミアムブランドとしての資産価値を維持している
- デザインの個性:スピンドルグリルの登場以降、「日本車らしくない強い個性」として海外でも評価が高まっている
- ハイブリッドの完成度:THSを軸にした静粛・滑らかな走りはプレミアムブランドとしての乗り心地と好相性で評価が高い
批判・不満が多いポイント
- 価格の上昇:近年のモデルチェンジ・一部改良のたびに価格が引き上げられており「高くなりすぎた」という声がある。特にLBX MORIZO RRの2026年5月改良で30〜36万円値上げされたことが話題になった
- BEVラインナップの少なさ:RZのみというBEVラインナップはメルセデスEQ・BMWiシリーズ・アウディeトロンに比べて手薄。中国市場では特にこの点が弱点となっている
- インフォテイメントの使い勝手:タッチパネル式マルチメディアディスプレイの操作性について「運転中に使いにくい」との声が一部で根強い
- LSの存在感低下:セダン市場の縮小に伴いLSの販売台数が減少しており、フラッグシップとしての求心力が以前より薄れているという指摘がある
- RC・ISの高齢化:RC・ISはモデルの歴史が長くなっており、フルモデルチェンジが待望されているがアナウンスはない
まとめ:レクサスの今と今後(2026年7月時点)
レクサスは1989年の北米スタートから37年を経て、世界90以上の国と地域で販売されるプレミアムブランドに成長しました。スピンドルグリル・スピンドルボディというデザインアイコンを確立し、NX・RX・LBXがグローバルで好調な販売を続けています。
2026年以降の焦点はBEVラインナップの拡充と中国市場での巻き返しです。NXのビッグマイナーチェンジ(2026年末予定)・ESの新型投入・RZの新グレード追加など商品投入は続いており、WECのLMGT3クラスへの参戦でモータースポーツによるブランドイメージの向上も図っています。ラグジュアリーとスポーツを両立させる「Lexus Electrified」の世界観を電動化時代にどう表現していくかが、今後のレクサスの最大のテーマです。