シリコンオフ・パーツクリーナー・ブレーキクリーナー。どれも「油分を落とす」製品ですが、成分・用途・使える素材が全く異なります。「とりあえずパーツクリーナーを吹いておけばいい」という使い方は、塗装を傷めたりゴムシールを劣化させる原因になります。この記事では3つの製品の違いと正しい使い分けを徹底解説します。
3つの製品は「何を落とすか」「どこに使うか」が全て違う
まず大前提として、3つは目的が異なります。
- シリコンオフ:ボディ塗装面・樹脂部品の油分・ワックス・シリコーンを除去する「下地処理用脱脂剤」
- パーツクリーナー:金属部品に付着した油汚れ・グリス・カーボンを除去する「部品洗浄剤」
- ブレーキクリーナー:ブレーキ周りの油分・ブレーキダストを除去する「ブレーキ専用洗浄剤」
塗装面にはシリコンオフ、ブレーキ周りはブレーキクリーナー、金属部品にはパーツクリーナーです。ゴムや樹脂、窓ガラスなども含めた外観に影響する部分はシリコンオフを使用します。アルミホールは塗装されていますのでブレーキクリーナーは使えません。
用途を間違えると塗装が悪くなったり、ゴムシールを劣化させたり、最悪の場合ブレーキ性能に影響を与える可能性があります。それぞれの特徴を正しく理解して使い分けることが重要です。
シリコンオフとは
シリコンオフは石油系溶剤を主成分とする脱脂剤で、ボディ塗装面・樹脂部品・ガラスへの使用を前提に処方されています。塗装を傷めにくい穏やかな溶剤を使いながら、ワックス・シリコーン・油分を効率よく除去できるのが特徴です。
シリコンオフが活躍するシーン
- ガラスコーティング・ボディコーティング施工前の脱脂
- 補修塗装・パテ施工前の下地処理
- ステッカー・両面テープ貼り前の接着面処理
- 未塗装樹脂への反応型コート剤施工前
- 撥水剤施工前のガラス面の脱脂
シリコンオフの注意点
- 引火性あり(第四類第一石油類)。火気厳禁・換気必須
- ゴム部品・本革・合成皮革への使用は変質の原因になる
- 既存のコーティング施工面には使用しない
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パーツクリーナーとは
パーツクリーナーは金属部品に付着した油汚れ・グリス・カーボン・錆止め剤などを強力に除去する洗浄剤です。石油系・炭化水素系の溶剤を含み、揮発性が非常に高く乾燥が速いのが特徴です。エンジン周り・足回りの金属部品の整備・清掃に広く使われています。
パーツクリーナーが活躍するシーン
- エンジンパーツ・トランスミッション部品の油汚れ除去
- ボルト・ナットのグリス・錆止め剤除去
- 足回り部品(サスペンション・ナックル)の清掃
- チェーン・スプロケットの洗浄(バイク等)
- キャリパーボルト周辺の清掃
パーツクリーナーの注意点
- 塗装面には使用厳禁:強溶剤が塗装を侵し変色・剥離の原因になる
- ゴム部品・樹脂には基本NG:オイルシール・ゴムブーツへの使用で膨潤・変質が起きる
- ブレーキパッド・シューへの使用注意:油分が染み込むと制動力が低下する。パッド周辺への使用はブレーキクリーナーが適切
- 製品によって引火性あり・なしが異なる。缶の表記を確認する
- 揮発性が高く吸入リスクがある。必ず換気・マスク着用で使用する
ブレーキクリーナーとは
ブレーキクリーナーはブレーキ周り専用の洗浄剤で、ブレーキローター・ドラム・キャリパー・パッドに付着した油分・ブレーキダスト・錆などを除去します。大きく「塩素系」と「炭化水素系(ノンクロロ)」の2種類があり、それぞれ特性が異なります。
塩素系ブレーキクリーナー
- 引火性がなく、密閉空間・屋内作業でも比較的安全
- 洗浄力が高く速乾性に優れる
- 廃液処理に注意が必要(塩素系廃液として適切に処理)
- 金属を長時間浸漬すると腐食する可能性がある
炭化水素系(ノンクロロ)ブレーキクリーナー
- 引火性あり。換気・火気厳禁が必須
- 塩素を含まないため環境負荷が低い
- 廃液処理が比較的容易
ブレーキクリーナーが活躍するシーン
- ブレーキローター・ドラムの油分除去(制動力確保に必須)
- キャリパー・キャリパーボルト周辺の清掃
- ブレーキパッド・シューの表面洗浄
- ホイールハブ・ハブボルト周辺の清掃
ブレーキクリーナーの注意点
- 塗装面・樹脂・ゴムへの使用厳禁:強力な溶剤が素材を侵す
- ゴムシール・ゴムブーツへの直接噴射厳禁:ブレーキキャリパーのゴムシールへの直接噴射は劣化・液漏れの原因になる
- 換気が不十分な空間での使用は健康被害リスクがある
- 炭化水素系は引火性があるため火気厳禁
3つの製品の使い分けまとめ
| 作業内容 | 使うべき製品 | 理由 |
|---|---|---|
| コーティング前の脱脂 | シリコンオフ | 塗装面に対応した穏やかな溶剤 |
| 補修塗装・パテ前の脱脂 | シリコンオフ | 塗装への影響が少ない |
| ステッカー・テープ貼り前 | シリコンオフ | 接着面を傷めず油分除去 |
| エンジン部品・ボルトの油汚れ | パーツクリーナー | 強力洗浄・速乾で金属部品に適する |
| 足回り金属部品の清掃 | パーツクリーナー | グリス・油汚れを強力除去 |
| ブレーキローター・ドラムの脱脂 | ブレーキクリーナー | 制動力に関わる部位への専用品 |
| キャリパー周辺の清掃 | ブレーキクリーナー | ゴムシールへの影響が最小限 |
| ガラス面の脱脂(撥水剤前) | シリコンオフ | 油膜除去に対応 |
「とりあえずパーツクリーナー」が危険な理由
整備DIYで「何でもパーツクリーナーを使えばいい」という誤解が広まっています。しかし以下の3点から、この使い方は危険です。
① ボディ塗装を傷める
パーツクリーナーの強溶剤はボディの塗装を侵します。ステッカーを剥がした後の脱脂やコーティング前の下地処理にパーツクリーナーを使うと、塗装が変色・白化・剥離するリスクがあります。ボディへの脱脂は必ずシリコンオフを使ってください。
② ゴムシール・ゴムブーツを劣化させる
足回りのボールジョイントブーツ・ドライブシャフトブーツ・ブレーキキャリパーのゴムシールにパーツクリーナーが直接かかると、ゴムが膨潤・硬化・亀裂を起こします。ゴムブーツの近くで作業するときは養生するか、ブレーキクリーナーのほうが適切な場面もあります。
③ ブレーキパッドに油分が染み込む
ブレーキパッドはもともと摩擦力で制動するパーツです。パーツクリーナーの油分成分がパッドに染み込むと制動力が低下する可能性があります。ブレーキ周りの洗浄には専用のブレーキクリーナーを使ってください。
安全に使うための共通ポイント
- 換気:3製品全て揮発性溶剤を含む。屋外または十分に換気した場所で作業する
- 火気厳禁:引火性のある製品は火花・タバコ・電気系統の近くで使用しない
- 保護具:ゴム手袋・マスク・保護メガネを着用する
- 素材の確認:使用前に素材・用途を確認し、対象外の箇所への使用を避ける
- 保管:高温になる場所(車内・直射日光下)への放置厳禁。40℃以上で缶が破裂するリスクあり
まとめ
シリコンオフ・パーツクリーナー・ブレーキクリーナーの違いをひとことでまとめると以下のとおりです。
- シリコンオフ:ボディ・塗装面用の脱脂剤。コーティングや補修前の下地処理に使う
- パーツクリーナー:金属部品専用の洗浄剤。エンジン・足回りの油汚れ・グリス除去に使う
- ブレーキクリーナー:ブレーキ周り専用の洗浄剤。制動に関わる部位の油分除去に使う
3つの製品はそれぞれの用途に最適化されており、代替が利かない場面があります。価格差も小さいため、3本揃えておくのが最もリスクが少なく正解の使い方ができます。